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(1)CGを用いた景観設計
ここまでの段階で検討された親水性防波堤の某本形態、計画テーマ、表現メニュー等といった事項を基にCGを用いて景観設計を行った。この手法により、防波堤全体の鳥瞰のみならず、上部工平面形状、港外側のスペイン階段部・パラペット部・バルコニー部、港内側のダブルデッキ部・壁面部・階段部・プラザ部、提頭部の形状、色彩、素材、植栽、ベンチ・ごみ筋などのストリートファニチャー、転落防止棚・手摺り等、かなり詳細な景観の検討を行うことができた。
(2)各要素のデザイン
?上部平面線形
当該防波堤は15mのケーソンを基本モジュールとした上部工を考え、これらの組み合わせにより上部工線形を設定した。Photo−2.にダブルデッキの外観を示す。

 

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Photo−2.View of The Double Deck

 

?港外側(階段部・パラペット部・バルコニー部)階段部はスペイン階段で構成した。これにより単調な階段に変化が与えられて楽しいデザインとなった。パラペットの水抜き穴の配置は港外側からの景観を考慮し、ケーソンのスリット間隔に合わせている。また、本防波堤の最上部にあたる上段デッキには、見晴らし台の役目を果たすバルコニーを各所に配置した。
?港内側(ダブルデッキ部・壁面部・階段部・プラザ部)ダブルデッキ部は日除け、雨よけ等の役目を果たすとともに、万一の高波浪時においては避難場所となるなど本防波堤のセールスポイントのひとつとなっている。同部はサインカーブのくぼみによって構成され、内部には木張りのベンチを配置した。防波堤を訪れた人々が、このベンチに腰掛け、港内を眺めながらくつろぐことができるよう配慮している。
壁面部には、歩行者が受ける圧迫感の低減を図る目的からルドルフカットを施し、ヒューマンスケールなデザイン演出に配慮した。
階段部は、防波堤の港内側と港外側を自由に行き来できるように100mに1ケ所程度配置した。また、マリーナシティ側からの景観を配慮してできるだけ小さくスマートな形状として、重苦しさを軽減した。
プラザ部は長さ450mにも及ぶ防波堤に変化を与えるため、南北1ケ所づつ計画した。プラザ部にはベンチを設置し、散策する人々の憩いの場となるよう配慮している。また、港内側と港外側の連絡用にスロープも設けた。
スロープの勾配等については、車椅子利用者への配慮から和歌山県における[障害者等の住みよい生活環境整備指針]に基づき設定した。

 

4. 施工

当防波堤は、これまでの防波堤機能に加え、周辺景観と調和し、一般市民が自由に出人りして安全に集い、憩い、散策する機能を有することになる。そのため、防波堤の建設にあたって、施工以下の項目について特に配慮した。
?周辺海域の汚濁防止対策のため、防波堤基礎の施工時は、汚濁防止膜を設置し、周辺海域への濁りの払散防止に努めた。
?防波堤上に設置する手摺りの外観変化・腐食及び舗装材の外観変化・メンテナンスの必要性を把捉するため、既設防波堤上に手摺りと舗装各々7ケースの供試体を設置し、暴露試験を行った。その結果を踏まえて、手摺りはスチールに亜鉛メッキし石材焼付を施したものを、舗装はセラミック平板を採用した。
?コンクリートの表面の汚れは、吸水性と平滑さに左右されると考えられる。そのため、水セメント比が小さいものを用い、型枠は表面をコーティングしたものを使用する等、十分養生して汚れ防止対策を講じつつ、入念な管理を行いながら施工した。
?防波堤上部工は柔らかなサインカープで形作られ、変化に富んだ形状をなし、長大な防波堤上でも快適で退屈しない散策路となっている。サインカーブ部分の施工は出来映え及び施工性を考慮し、サインカーブ部分を4分割した形状の型枠を工場製作し、現場で建て込みを行った後に化粧型枠を取り付けコンクリートの打設を行った。また、セパレーター及び木コンの穴埋めについては、内側にボンドを塗ることにより、表面に錆等が流れ出ないように考慮した。
このように施工も美観への配慮とメンテナンスの容易な材料の選定に頂点を置き、防波堤という過酷な条件に耐えうるよう入念な施工管理を行った。

 

5. 施工後の状況

5−1. 管理体制
国で施工した防波堤(北)は、平成7年2月7日に和歌山県に管理委託し、その後は和歌山県から第三セクター「和歌山マリーナシティ株式会社」に島内の公共施設と共に、管理運営業務を委託している。親水性防波堤の利用制限と安全対策はTable-4.に示すとおりである。

 

 

 

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